色の組み合わせは無限の楽しみ
ニットが織り成す小物の世界

ハンドニット作家「eccomin(エッコミン)」として活動する野口智子さん。あざやかな色の糸をアクセントにした名刺ケースや、もこもこの質感を生かしたバッグなど、心躍るデザインのニット小物を数多く発表しています。今回制作されたEDiTのカバーは「eccomin」作品の中でも人気の配色。自身が運営するショップ「chocoshoe」にてお話を伺いました。

TEXT:阿部康子 PHOTO:畔柳純子

学生時代に魅了されたニットの世界

野口さんがニットの魅力に目覚めたのは、文化服装学院に通っていた学生時代。「実はパタンナーを目指していたのですが、同時に編み物も好きだったんです。パタンナーはとても緻密な世界。性格が大雑把な私は(笑)、ニットのほうが相性がよさそうだなと感じて」。そうして、「ニットデザイン科」へ進みます。

ニットデザイン科でめきめきと才能を伸ばした野口さん。在学中には、当時イタリアの老舗紡績メーカーとして有名だった「リネアピゥ」の毛糸を使って作品をつくる機会に恵まれ、大勢の学生の中からデザイナーに選ばれました。

選出された数名の同級生と現地イタリアを訪れた野口さんは「イタリアでもっとニットを学びたい」と、その後2年半の間フィレンツェに留学。帰国後は、アパレル会社を経て、インポート商品を扱うショップで販売員兼バイヤーとして勤務します。イタリアのニットアイテムを仕入れる仕事をするうち「もしかしたら、自分でもつくれるかもしれない」と、ニット作家の活動を始めたのです。

そして、作家名の「eccomin」の意味も教えてくれました。「“ecco(エッコ)”は『ほら!』、“mi(ミ)”は『私』という意味のイタリア語。その響きがイタリアにいる頃から好きで、その言葉に、自分の名前の“野口”の「n」を加えました」。

ニットの小物づくりにシフト

最初はニットで服づくりをしていた野口さんですが、「小物もつくってみたら」と常々旦那さまから言われていたそう。その言葉に背中を押されてつくったのは、バッグやシュシュといったファッションアクセサリーの数々。「まわりの評判が良かったので、それから小物づくりが多くなりました」。

写真上 : 今でも定番人気のシュシュ。夏はコットン、冬はウールの糸を使って仕上げる。色の組み合わせは無限! / 下 : 最初に手がけたものと同じ型のバッグ。モップ状の毛糸は手ざわりも楽しめる

「ほっこり」だけではないニットの魅力

ニットというと、やんわりとしたイメージを持つ人も多いかもしれません。ところが、野口さんは「“ほっこり”だけじゃないところを見せたい」と、糸の色選びやパーツにこだわります。けれど、ただ派手な色や個性的な形であればいいというわけでもなさそうです。「始めはカラフルなものが多かったのですが、次第にシンプルで普段使いやすいデザインや色づかいにも広がってきました」。

落ち着いたトーンの糸も使いながらも、ぱっと目を引くネオンカラーの糸も混在する「eccomin」の作品。「ブランドを始めた頃から、ネオンカラーの糸は気に入って使っています。このアクセントカラーで『eccomin』と認識してくれる方もいてうれしいんです」。また、今回のカバーのゴムバンドに使用しているのは、京都で出会った貴重なパーツだそう。

それぞれの毛糸の色やパーツが引き立つような絶妙なカラーリングは、イタリアに留学し、ニットのデザインセンスを習得してきた野口さんだからこその配色なのかもしれません。

写真 : ネオンカラーのラインが目を引くEDiTのカバー。「eccomin」の中でも人気の高い名刺ケースのデザインを生かして制作。表のニット生地と裏地の間には、厚手の芯を貼り強度をアップ。

作品イメージはすべて頭の中に

野口さんは、夏はコットン、冬はウールの毛糸を使い、一年を通してニットの小物を展開しています。制作のヒントはどんなところにあるのでしょうか。

「街を歩いていて、気になる色や柄のコンビネーションがあるときには写真を撮ります。インターネット上で気になる配色などの画像があればストックしておくことも。ほかにも人が着ているニットや、外のお店でニットの服などを見て、『ああ、目数はいくつにすれば素敵に見えるんだとか、こういう感じに減目したらかわいいんだ』と発見することも多いです」。

こんな風にして、いつも頭の中に作品イメージができあがっているため、野口さんは制作前に下絵を描きません。イメージにぴったり合うパーツや糸をとことん探し、頭の中で完成したアイテムを現実に編み出すような感覚で作品を形にしていると言います。「糸は実際に編んでみると思っていた雰囲気と違うことも。編み機で3〜4回ほど試作を繰り返して、ようやく製品になります」。

写真 : ブラザーの編み機は、学校時代から長年愛用している一生もの。編み目の幅を指定して、好みの糸をセッティングする。持ち手がついた上の部分を左右にスライドさせると1段ずつ編まれていく。

「季節やその日の天気で糸の状態が変化するんです。空気の水分量によって、同じ目数や段数で編んでも、昨日は38cmだったのに今日は40cmで仕上がったということもあります」。日によって変わる糸の状態を感じ取りながらの作品づくりは職人技。まるで糸が生きているような感覚だと話します。

量産品ではない手づくりのよさを伝えたい

2011年には、野口さんご夫婦と、作家・イニイニさんとユニット「chocolate syrup on shoe」を結成。手づくりの丁寧さがあふれる作品を生み出す作家を集め、ギャラリーでグループ展を開催してきました。

2015年には東京・渋谷に実店舗をオープン。作家作品とともに、糸や道具などの手芸用品を扱い、ニット制作など、毎回4〜5人ほどが参加できるワークショップも開催しています。

野口さんは、店内にも自身の編み機を置いており、制作作業を行うこともしばしば。お店を訪れれば、実演さながらの手しごとを見られるチャンスも!

今後はどのような作品をイメージしているのか伺ってみると、「姪っ子が生まれたので、今後はベビーものをつくりたいなあと思っています。ベビーシューズとか、お母さんと赤ちゃんおそろいのアイテムなど、イメージがふくらみますね」とほほえみます。野口さんの制作意欲はますます高まっているよう。これからどんな作品が編まれていくのか、お店に並ぶ日が楽しみです。

※この記事に掲載されたのカバー販売は終了となりましたが、たくさんのポンポンをまとったとてもかわいらしい「eccomin」のカバーが新たにできました。

気になる方はこちらからどうぞ

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eccomin
野口智子 Tomoko Noguchi

文化服装学院在学中に、イタリアの紡績メーカー「リネアピゥ」主催のMaster Lineapiuに選出され、2002年よりのイタリアに奨学金留学。帰国後は、ニットデザイナーやバイヤーとして働く一方、自身のハンドニットブランド「eccomin」をスタート。2011年に作家ユニット「chocolate syrup on shoe」を結成、2015年には手芸用品と作家もののショップをオープン
http://eccomin.com
http://chocoshoe.com