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インタビュー

パッチワークキルトを通して
手づくりの楽しさや大切さを表現

グラフィックデザイナー・橘川幹子さんとバッグデザイナー・本城能子さんのユニット「SANKAKU QUILT(サンカクキルト)」。三角形の布をつないでつくる作品は、ポーチやバッグなど普段のファッションやインテリアにも取り入れやすく日常づかいできるアイテムです。作品を通して、既存のパッチワークキルトのイメージとは異なる魅力を伝えるお二人の楽しそうなアトリエにお邪魔しました。
TEXT : 中村克子 PHOTO : 高見知香 

三角形のおもしろさをベースに

「三角形を組み合わせることで、四角形をはじめ、さまざまな形をつくることができます。そこに無限の可能性を感じますね。単純に、三角形が好きなことも理由の一つです」と「サンカクキルト」のユニット名の由来について話してくれた橘川さん。「私たちの活動は、ものを安く買って次々に消費していくのではなく、手づくりのよさや長く使っていくことの大切さを伝えていきたいという思いからスタートしました」と本城さんが続けます。

パッチワークは布と布をつなぎ合わせること、そしてキルティングは2枚の布の間に薄いワタを入れて縫い合わせること。この二つを合わせたパッチワークキルトの作品をメインに制作している「サンカクキルト」。今年から本格的な活動をはじめた二人は元々、大学時代の同級生。当時、橘川さんはグラフィックデザインを、本城さんは家具などのプロダクトデザインを専攻していたそうです。

現在、手芸書などをメインにデザインの仕事をしている橘川さん。「仕事柄、さまざまな手芸の本を目にする機会が多いですし、前から手芸は好きでしたね。映画をよく観るんですけど、映画のワンシーンでアメリカの女の子の部屋には、おばあちゃんやお母さんがつくったキルトのベッドカバーやクッションが置いてあることが多いんですよ。そういう日常生活で使うアイテムを自分でもつくりたいと思いました」。

一方、布や革などさまざまな素材を取り入れたバッグ制作を手がけている本城さん。「これまで、布と布をつなぎ合わせたバッグもつくっていました。だから、橘川さんからパッチワークキルトで何か活動ができないかという話があったとき、おもしろいことができそうな予感がありましたね」。

バラエティに富んだ柄や素材を使用

「ストライプやドット、チェックなどの柄と無地の布を組み合わせるのがポイント。色づかいは作品によってポップであったり、シンプルなものなどさまざまです」。布の素材は綿をメインに、革やベルベットなど他の素材を組み合わせることもよくあるそうです。

こちらは、二人が「サンカクキルト」として最初に制作したクラッチバッグ。橘川さんは色とりどりのストライプと無地の布を組み合わせたデザイン。そして、本城さんはインパクトのあるギザギザとした模様をメインにしたデザイン。それぞれ二人の個性があらわれた作品です。

写真左:橘川さんが装丁やデザインを手がけた手芸書の数々 / 右上:配置の仕方で印象が変わるデザイン見本 / 右下:創作アイデアの参考にもなっているキルト関連の洋書

遊び心あふれる手帳カバー

今回、「サンカクキルト」が制作したEDiT 1日1ページ手帳のコラボカバーは、白と黒のモノトーンのアイテムとカラフルなアイテムの2種類。本城さんによれば、「三角形の布の大きさを変えて、モノトーンの方が小さめでシャープなイメージに、カラフルな方は大きめのサイズで大胆なイメージに仕上げました」。

もう一つの特徴は、素材の違う綿と革の組み合わせ。「ふんわりとした綿に革のスマートな印象が加わることでアクセントになっています。かわいらしさの中にかっこよさを表現することができました」。また、オリジナルスピンとペン挿し部分にも革を使用。

「カバーの裏地には柄の入った布を取り入れました。裏地もおしゃれだと使うのが楽しいですね」と橘川さん。その他にも、2種類のカバーそれぞれのステッチの向きを変えたり、カードスリッドの部分はカードを入れやすいように三角形にしたりと、細かい部分にもさりげない遊び心が施されています。

「このカバーはワタが入っているのでフカフカとして、触り心地がいいんですよ。直接、手にとって質感を味わってほしいですね。女性だけでなく、男性にもぜひ使ってもらいたいと思っています。特に、モノトーンの方はシンプルなイメージなので男性にもおすすめです」。

二人の個性を生かした創作活動

二人の作品づくりへのアプローチはそれぞれ異なるそうです。「私はノートにデザインのパターンを描いてから、それに合わせて布を選んで制作します」という本城さんに対し、「私は最初から、実際に布を並べて感覚で組み合わせていきます。キルトのデザインは幾何学模様の組み合わせなので仕事柄、得意なんです。でも立体的につくり上げるのは苦手なので、そこは本城さんにおまかせしています(笑)」と朗らかに話す橘川さん。

写真左:多くの人にパッチワークキルトの楽しさを知ってほしいという本城さん / 右上:デザインのパターンが描かれたノートをもとに布を組み合わせる / 右下:糸を引き出す際に便利な本城さん手づくりのアイテムなど愛用の裁縫道具

作品にもよりますが、細かい作業は個々で行うというお二人。「お気に入りの布を仕入れたときや、作品のアイデアについては二人で会ったときに意見交換をします」と話す橘川さん。「布集めは普段から気づいたときにしています。購入もしますが、処分する洋服があったら身ごろだけ残しておきます。素材の特徴については本城さんの方が詳しいので、どういう風に使うかアドバイスをもらうこともよくあります」。

写真左上:細かくサイズを計ることができる定規など普段使っている裁縫道具 / 左下:豊富に揃えられた柄ものや無地の布 / 右:橘川さんにとって作品づくりはいい気分転換にもなる時間

誰でも手軽に参加できるワークショップ

今年、個展を開いた際にはワークショップも実施。「参加者の方にはポケット付きのカードケースをつくってもらいました。4枚の布を選ぶところからはじめたんですが、布選びも楽しみの一つなんですよ」。参加者からはさまざまな感想や反応があったそうです。「手縫いをするのが学校の家庭科の授業以来という人もいました。家に帰ってから自分でやってみたという人もいて、興味を持ってもらえたのがうれしかったですね」と本城さんがワークショップを振り返って話してくれました。

写真 : 以前おこなったワークショップでは何種類もの布の中から好きな布を選んで制作。参加者の方それぞれのオリジナルのカードケースが完成

「並縫いさえできれば、誰でもできるのがパッチワークキルトのよさ。はじめての方もぜひ挑戦してもらいたいですね」と橘川さん。「今後は、こんなものをキルトでつくるの?と驚くような意外性のあるアイテムをつくってみたいです(笑)。私たち、キャンプに行くのが好きで、寝袋などのキャンプ用品をパッチワークキルトでつくるのもおもしろそうですね」と楽しそうに話す本城さん。

写真左上:パッチワークキルトは決まりごとがなく自由に縫うことができる / 左下:ドットやストライプ、レオパードなど柄の組み合わせが楽しめるクッションとラグマット / 右:彩り豊かなカードケースとクラッチバッグ

「アメリカでは、女性が集まりコミュニケーションの場として、チクチクとキルトを縫いながらおしゃべりをする習慣があるそうです。サンカクキルトでも、みんなで好きな布を持ち寄って交換をしたり、縫い物をしたり、おしゃべりしながら楽しい会を開催できたらと思っています」。二人の創作のアイデアは尽きることがありません。

※ こちらの商品は販売終了となっております。ご了承ください

Profile

SANKAKU QUILT
本城能子 & 橘川幹子 Takako Honjo & Motoko Kitsukawa

グラフィックデザイナーの橘川幹子とバッグデザイナー本城能子が三角の生地をつないでつくるパッチワークキルトのユニット。外国の映画に出てくる女の子の部屋にあるような、日常になじんだシンプルなキルトに憧れて、制作を開始。今年よりパッチワークキルトをつくる楽しさや使ううれしさを伝える活動を展開中。
https://www.instagram.com/sankakuquilt/