40代の自分たちがほしいと思える「エンディングノート」を

40代の自分たちがほしいと思える「エンディングノート」を

EDiTの新しい仲間「大人のライフログ用ノート」の開発を担当したのは、マークスのクリエイティブセンターの部長として商品部門を統括し、EDiTのブランドマネージャーでもある佐倉由枝、そしてマークス勤務を経て、現在は編集者、文具プランナーとして活躍する永岡綾さん。

共に40代を迎え、人生の後半を考えたときに、「未来を見つめるための、自分たちの世代がほしいと思える"40代のエンディングノート"をつくりたい」と大人のライフログ用ノートの商品化に至りました。

今回はそんな企画者のふたりに、商品開発秘話と40代の今、感じていることを聞いてみました。

PHOTO : 井関信雄

ふたりの出会いは、10年以上前にさかのぼります。編集制作会社だった前身を持つマークスが、編集のバックグラウンドを生かして手帳を主とした商品づくりをはじめたころのこと。以来、今日にいたるまで、共にときに笑い、ときに泣き、同志としてモノづくりの道をいっしょに歩んできました。

編集者が文具をつくりはじめた走りかもしれない

佐倉 : 私が編集者からプロダクト制作、当時はまず手帳を手がけるようになったのが34歳のとき。ちょうど同じころに永岡さんがマークスに入社しました。代表の髙城も元編集者。私も永岡さんも編集者で、今思えば、編集者が文具や雑貨をつくりはじめた走りだったのかも。

永岡 : 私が佐倉さんに初めて会ったのは、入社の面接時。ノースリーブの白いシャツに真っ赤なミニスカートで現れて、自由な社風なんだなと感じました(笑)。

佐倉 : そういう永岡さんこそ、面接なのにギンガムチェックのシャツにロングスカート姿で。お互い自分のスタイルを押し切っていると思いました(笑)。

持ち前の明るさでチームを牽引し、マークスのクリエイティブ部門を統括する佐倉由枝

持ち前の明るさでチームを牽引し、マークスのクリエイティブ部門を統括する佐倉由枝

永岡 : おもしろかったのは、編集者としての自分たちのネットワークで、普段は文具をつくっていないエディトリアルのデザイナーさんたちとモノづくりができたこと。既成概念がない分、発想が自由で、それがマークス商品の個性をつくっていったのかもしれません。また編集出身の強みを活かして、今回の大人のライフログ用ノートのような商品も、自社でコンテンツからじっくりとつくることができる。

柔らかい話し方が印象的な永岡綾さんは、ワークショップ講師としても活躍

柔らかい話し方が印象的な永岡綾さんは、ワークショップ講師としても活躍

本と雑貨の有機的な関係づくりが転換期に

佐倉 : ふたりの大きな転換期は、「エディシォン・ドゥ・パリ」という当時日本在住だったフランス女性ふたりがはじめた出版事業をマークスが引き継いだことですね。元々は、現地のカメラマンやコーディネーターをスタッフに、パリをはじめとするヨーロッパのインテリアを紹介する書籍が中心だったのが、パリのクリエイターとコラボレーションした商品をつくったり、クラフト系商品のハウツー本をつくったりするようになり、文具・雑貨事業と出版事業の有機的な関係がマークスに生まれました。

そのころ、「ロベール・ル・エロ」というパリのブランドの文具や雑貨小物をマークスでつくっていましたが、デザイナーのコリンヌ・エランのライフスタイルやインテリアを紹介する本『ロベール・ル・エロとパリ』をつくったことは、私のキャリアの中でも大きなターニングポイントになりました。

佐倉が携わったエディシォン・ドゥ・パリの書籍とEDiT手帳

佐倉が携わったエディシォン・ドゥ・パリの書籍とEDiT手帳

“仕事”と“好き”を分けなくてもいいと思うことができた

永岡 : 私は「スクラップホリック」というスクラップブッキングのためスクラップ帳やパーツ素材などのコレクションを企画し、そのためのハウツー本も自分が著者となってつくりました。当初は、ハウツーを考えたり作例をつくったりするのは外部のクラフト作家さんにお願いしようと考えて探していたけれど、担当デザイナーといっしょにしっかりつくりこんだスクラップホリックの世界観を、外部の人に共有してもらうのはなかなか難しいとわかった。

それまでに私がつくっていた商品の使用例サンプルが店頭で好評だと聞いていたこともあり、「ハウツー本をつくるなら、自分が著者としてやってみたい」と代表(髙城)に相談してみたんです。そしたらあっさり、「いいじゃないか。やってみなよ」と言われて、ちょっと拍子抜けしたけれど(笑)。

編集の仕事もモノづくりも好きな私としては、やりたいことが実現でき、“ああ、仕事と好きなことをこんなふうに結びつけられるんだ”と思うことができた。ここから現在の「編集者・文具プランナー」というパラレルキャリアがスタートしたとも言えるし、背中を押してくれた髙城さんには今でも感謝しています。

永岡さんの最新刊『週末でつくる紙文具』(グラフィック社)と掲載作品の一部

永岡さんの最新刊『週末でつくる紙文具』(グラフィック社)と掲載作品の一部

40代の今、感じていることは?

佐倉 : 私は旅行が好きで、これまで国内外あちこち行っていますが、40代になって初めてミャンマーで医療ボランティアに参加しました。そこで出会った介護福祉士の20代女性が、偶然にもEDiTの週間ノート手帳を使っていたんです。そのミャンマーでのボランティアをきっかけに彼女は今、看護学校に通っています。そういう人がEDiTを使っていることに感激したし、彼女の人生が転換するきっかけに立ち会えたこともうれしかった。

若いころと変わって、「自分の成長より、人のために何ができるか」を考え、内より外、未来に気持ちが向かっている気がしています。永岡さんは、40代の今、どんなことを感じていますか?

永岡 : 私は、20代の終わりにイギリスで1年間を過ごし、ブックバインディング(製本)を学びました。当時は「今やっていることが先々にどう結びつくか」をすごく意識していました。でも、人生ってそうそう思い通りにはいかないですよね。製本を仕事に生かしたいと思いながらも、どうしていいのかわからないままでした。

けれど、数年のち、マークスでの商品企画に製本の知識が役立ち、さらに十数年後には『週末でつくる紙文具』という本を出させていただくことになりました。

若いころはすぐに結果が見えないと不安になっていたけれど、今は、目の前のこと一つひとつを大事にしていれば、きっとよいご縁に巡り合えると思えるようになりました。

旅行好きのふたりにとっても欠かせない、足跡を残す白地図ページ

旅行好きのふたりにとっても欠かせない、足跡を残す白地図ページ

未来を考える、人生に深く関わるノートをつくりたい

佐倉 : 40代も半ばになり、自分の人生が末広がりではなく、終わりが見えてきたことがわかった。そこでEDiTでも、手帳という1年の時間軸よりも長いスパンで、人生や日々を考えるものがつくれないかと思いました。

これまでにもEDiTで「読書ノート」と「トラベルノート」をつくりましたが、本や旅といった1テーマではなく、もっと人生に深く関わるノート、「40代が過去を振り返りながら未来を考える」そんなノートをつくりたいと大人のライフログ用ノートを企画しました。

私自身、毎年年末年始に1年単位でレビューとライフビジョンを、数年おきに自分年表をつくっています。過去を振り返ることで自分に自信が持てると、これからやりたいことが見えてきます。それがEDiT手帳のプランニングページや今回の大人のライフログ用ノートにつながっている。私は「自分が自分のためにつくっているもの」を商品化する傾向がありますね(笑)。自分が深く感じていないとプロダクトには落とし込めません。そこで商品化するにあたり、編集は信頼のおける永岡さんにお願いしました。

永岡 : 市場にあるエンディングノートは、60代以上のシニア向けが多いですよね。そういったノートは、人生の集大成を記すものだったり、自分の人生の終わりについて考えるものだったりになる。でも、私たちがつくるなら、自分たちの世代に向けて、未来のことを考えるツールになるノートをつくりたいと思いました。

40代以降にも、まだまだ違うステージがある

佐倉 : 人生が100年になると言われている現代、40代の先は長い。40代以降もまだまだ2つ、3つと違うステージがつくれるんじゃないかと思うんです。もっといろいろな生き方があっていい。けれど人生や生活を変えるのは大変。そんなときにこのノートをきっかけのツールに使ってほしいですね。この大人のライフログ用ノートは、一度に書くものでなく、時間をかけて綴っていくものだから。

永岡 : それでノートの帯にも「半生を“棚卸し”して“こうしたい”を見つけるための、10年かけてゆっくりつづる、人生ノート」と入れましたね。

人のぬくもりがある、長く使えるノートを

佐倉 : 大人のライフログ用ノートは、一生使うノート。だからこそ、コンテンツもこだわってつくったし、用紙も優しい手触りとめくりのよさに定評がある書籍用紙の「画王」にしました。

またカバーも気軽に使える塩化ビニール製もつくりましたが、やはり人の手のぬくもりがあるもの、長期保存ができるしっかりとしたつくりのものをつくりたいと思いました。そこで、永岡さんがご縁のある長野の美篶堂にハードカバーの製本を依頼したんです。

手前はスリーブケース付きの美篶堂製ハードカバー

手前はスリーブケース付きの美篶堂製ハードカバー

永岡 : 美篶堂さんとは『美篶堂とつくる美しい手製本』(河出書房新社)など書籍の編集を担当して以来、長野の工場にお邪魔したり、美篶堂さんが理事を務める本づくり協会の会報誌を編集したり……と、公私にわたり関係が深まっています。

以前、創業者の上島松男親方が50年前に製本したものを見せてもらったことがあるんですが、今手に取ってみても、劣化することなく、しっかりとしていました。

佐倉 : 大人のライフログ用ノートも、手製本により一つひとつ丁寧につくっていただき、愛着の湧く1冊に仕上がっていると思います。このノートは、これからの人生をつくる、「ライフデザインをするノート」です。

私は、人は書くことによって思考を整理して、自分の気持ちを表現する。つまり、書くことが生きることにつながると思っています。だからユーザーのみなさんにも、このノートを使って、書くことをより好きになって、より充実した人生をつくっていってほしいですね。

企画者が使ってみた大人のライフログ用ノート

■永岡綾編 : 編集者・文具プランナーとしての基盤をつくった20〜30代を振り返って

使用例・永岡綾編 : 編集者・文具プランナーとしての基盤をつくった20〜30代を振り返って

① マステ®で住んでいた場所を色分け
② マステ®を挟んで上が仕事、下がプライベートのできごと
③ 自分にとって大きなできごとをポイントとして記入
④ 29歳〜は旅行をすることが多かったため、訪れた国をリストアップ

■佐倉由枝編 : 60〜70代を思い描く、未来のプランナーとして

使用例・佐倉由枝編  : 60〜70代を思い描く、未来のプランナーとして

① 終わりからの時間を逆算しつつ、自分の人生をステージ別にテーマをつくり、これからについて考える
② 上半分は、実際の足跡を書くスペースに。下半分に、今思い描いている未来年表を記入
③ 未来年表は変化していくもの。書き直したり、アップデートしたりしていくために、筆記具は鉛筆を使用
④ 家族の年齢、ライフイベント用に一番下の行を活用

お知らせ

永岡綾さんの新刊『週末でつくる紙文具』(グラフィック社)の発売を記念して、本書籍に登場する作品の展示とオリジナル紙文具の受注会をマークスの直営店・マークスタイルトーキョー GINZA SIX店にておこないます。この機会にぜひ実物を見て、手づくり文具のよさと楽しさを感じてください!

「永岡綾の週末でつくる紙文具」展
2017年10月24日(火)〜11月7日(水)

マークスタイルトーキョー GINZA SIX店
東京都中央区銀座 6-10-1 GINZA SIX 5F
TEL/FAX 03-6280-6776
営業時間 10:30〜20:30
marks.jp/shop/markstyle-tokyo

佐倉 由枝 Yoshie Sakura / 永岡 綾 Aya Nagaoka
佐倉 由枝 Yoshie Sakura / 永岡 綾 Aya Nagaoka

(左) 佐倉由枝 : 株式会社マークス クリエイティブセンター部長、手帳・ノートブランド「EDiT」ブランドマネジャー。同社にて、出版部門「エディシォン・ドゥ・パリ」の書籍編集や手帳の商品企画などを担当し、「EDiT」は2010年の立ち上げより企画開発に従事。2016年より現職。

(右)永岡綾 : 編集者・文具プランナー。イギリスで製本を学んだのち、雑誌の編集、マークスの商品企画などを経て、現在フリーランス。著書『週末でつくる紙文具』(グラフィック社)が好評発売中。
Instagram : @weekend.bookbinder