代官山のデザイン会社が金沢に進出。
その真意と可能性は?

広告制作を軸にしながらも、ブランディングやPR戦略のサポート、映像制作と、幅広い活動を続けている株式会社エーミライトデザイン。東京本社に加え、2014年には石川県・金沢で新たにオフィスを立ち上げ、地元に根ざした活動を展開している。代表者・千布真也さんが語る「ローカルにおけるクリエイティブの可能性」とは?

PHOTO:沼田学 TEXT:宗像幸彦

将来的に金沢のクリエイターたちのハブになれれば

東京、代官山。旧山手通りを眼下に望むオフィスに入ると、真剣にパソコンに向かう若手デザイナーたちの姿が目に飛び込んでくる。彼らを束ねているのが、千布真也さん。海外放浪、フリーターを経験した後、バー経営をしながら資金を貯めて独立したという苦労人だが、本人はいたってさわやかで物腰やわらかな印象だ。自身が代表を務めるエーミライトデザインは、女性向けサービスのブランディングを得意とする広告制作会社。といっても、いわゆるデザイン会社の枠にとどまらず、映像制作やCSRワークにまで多岐に及ぶ。2014年6月には北陸の古都、金沢にオフィスを設立。北陸新幹線も開通し、何かと話題の金沢に拠点を設けたのはどんなきっかけがあったのだろうか。

「これまで培ってきた自分たちの特色や強みを東京以外の場所で発揮したいという思いがあったのと、会社の成長に疑問符が出てきはじめる前に、なんとか攻めの一手を打ちたいというのが地方進出の理由でしょうか。かといって大阪、京都、福岡あたりはかなり開拓し尽くされている印象があったので、最終的には金沢にしようと。個人的には縁のある場所ではないんですが、金沢って実は女性の衣食住に関する美意識が非常に高い。その点が女性向け商品のブランディングやデザインをずっと手がけてきた我々にとっても非常に好都合かなと。いざビジネスをスタートさせてみると、東京との規模感の違いは感じる一方でプランが決まるスピードも早い。この点は非常にやりやすいですね」

現在は自身も金沢に移住し、もともと本拠地にしていた東京・代官山のオフィスには定期的に通う日々。「とにかく人がいいし、素敵なロケーションがたくさんある。居心地が良すぎて困ってしまうくらい」と笑う千布さんの元では、地元に根ざした様々なプロジェクトが走り出している。そのひとつが、金沢の企業や団体、職人をストーリー仕立ての映像で表現した「ROMANCE GOVERNMENT FILMS」。新しい広告モデルを模索するべく始めたそうだが、内容は押しつけがましさをまるで感じさせない、プロモーションビデオや短編映画のような感触を持つ作品に仕上がっている。

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「金沢に来てやりたかったことのひとつに、伝統工芸や郷土料理を今の時流に合わせた形で新しい価値を付けていくという仕事があります。このROMANCE GOVERNMENT FILMSはその一端といえるかも。英語のナレーションを付けてあえて外国人の視点風に撮っているのも、最終的に観光誘致につながればという狙いから。ビジネスとしてはまだまだ試行錯誤の段階ですが、何よりこのプロジェクトで地元のいろんなクリエイターたちと知り合えた点が大きかったですね。将来的には自分たちがハブのような存在になれればいいかなと。それと今、金沢市内の廃校になった山間の小学校の校舎と体育館を利用して、ユニバーサルデザインの研究施設を作るプランも進行中です。そこでキネクト(※)のような最新デバイスを使って、体の不自由なお年寄りでもバーチャル運動会を楽しんでもらえるような、オープンな場所にしていきたい。土地がいっぱいあって、クリエイター志望の若者も多い金沢だからこそできることを追求していければと思っています」

※Microsoftが開発した、プレイヤーの動きや声を認識できるコントローラー。Xbox360などで使われる最新技術のひとつ。

母親から学んだ姿勢。「稼ぎたいなら人を喜ばせろ」

金沢オフィスの設立と並行して、エーミライトには注目すべき事業内容がある。それがCSR(社会貢献)。これまでにも、ケニア・ナイロビの貧困地区にある学校への金銭的支援や、東ティモールにおけるコーヒー豆のリブランド(コンセプト設計やパッケージデザイン)などを行ってきた。こうした一面もまた、千布さんという人物をうかがい知る大事な要素でもある。

「きっかけは東日本大震災。自分たちの無力感をいやというほど味わいました。以来、仕事の目的意識を根源的なレベル、それこそ人の生活とか命に直結するようなところまで持っていきたいというのがあって。僕らの仕事って、基本的には商業だけで成り立っていると思うんですが、それだけじゃない可能性を探ってみたいという思いも常にあります」

話を聞けば聞くほど、エーミライトが既存のデザイン会社の枠組みにとらわれていないことが分かってきた。では、こうしたアイデアを生み出す発想力や、実現していく行動力はいったいどこから来るのだろうか。現在は社長業の方も多忙を極めてはいる千布さんだが、根っこはやっぱりクリエイター。常に刺激を受けながら、頭の中でモノ作りのヒントを考えているという。

「いつも気になるのは、構成とか組み合わせにおける異物感とか意外性ですね。たとえば、冷蔵庫を開けたとき、チルドルームとか野菜室とか、玉子を置くスペースだとか、整然と分かれているじゃないですか。そこにまったく場違いな食べ物を置くとどう見えるのか、なぜ違和感を感じるのかを考えてみる。そこにヒントが隠されているような気がしてならないんです。整合性があって規則正しいものは確かに美しい。だけど、人を飽きさせないためにはそれだけじゃダメ」

今の職業に就く上でもっとも影響を受けた人物は?と聞いてみると、なんと返ってきた答えは「母親」。仕事に対する考え方はすべて親から教わったという。

「僕の母親って、おこずかいを一切与えず自分で稼いでこいっていう人だったんです。8歳の息子にですよ(笑)。一度、近所から廃材を拾ってきてゲーム機を自作したらそれで3千円稼げたことがあって。あれが仕事の原体験だったのかもしれません。お金を稼ぐには、相手が想像する以上に喜ばせなきゃならないってことを子どもの頃から学ばされていたように思います」

全員が同じノートを持てば強力な連帯感が生まれるかも!?

普段、ミーティングのときはもっぱらパソコンを使用しているという千布さん。そんな彼が「アイデアノート・エディット」を使うと、いったいどんな使い方になるのだろうか。興味津々でページを覗いてみると、現在進行中の様々なプランについての骨子やアイデアがぎっしり書き込まれていた。

「自分の仕事に関連していうなら、アイデアノート・エディットは3つの用途が考えられると思いました。まずプロジェクト自体の構想案を練るとき。人、モノ、お金を含めた座組や相関関係を図案化する場合に横向きは広く自由に書けて便利ですよね。次にCMのコンテ作り。訴求ポイントやサービス内容を洗い出して、どういう流れがベストなのかを考えるときに、それぞれの要素をふせんに書いておくと順番を自由に入れ替えながら考えられる。3つ目はブランディング。いろんな要素を書きだして、取捨選択していくという作業がどうしても必要になるんですが、これもふせんを使うことで自分にとっても整理しやすいし、他のスタッフとも共有できるのが大きなメリットでしょうね」

特に、チーム単位でアイデアや情報を共有するブランディングに関しては、かなり利用価値が高いのでは、と千布さん。

「プロジェクトをやるときって、チームの一体感が大事なんです。そういう点で、自分ならまずはメンバーのみんながアイデアノート・エディットを持つことから始めたい。同じノートで持つことで強力な連帯感が生まれる……。これって、なかなか新しいんじゃないでしょうか」

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千布真也 Chifu Shinya
プロデューサー、クリエイティブディレクター

株式会社エーミライトデザイン代表。海外放浪、フリーター、飲食店経営などを経て2006年、株式会社エーミライトデザインを設立。おもに広告制作や、ブランディングを軸としたプロモーション提案、CSRワークなどを行う。2014年には金沢オフィスを設立し、地元に根ざした活動を展開中。