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インタビュー

文具王・高畑正幸さん流「読書ノート」の使い方

「文具好きになったのは、小学生のとき」という文具王・高畑正幸さん。
そのきっかけは、「図画工作が好きだったので、いろいろな文具を使うのも好きだったし、文具は学校に持っていけるオモチャみたいなもの。オモチャの次に、"これを買う"と自分で選べる初めてのものだったから」と言います。

「そして、そのまま大人になってしまいました」と笑顔で語る高畑さんは、「中学時代には友人の同人誌に文具のイラストを書いてコメントを添えるといったコラムをすでに書きはじめていたんです」と続けます。まさに、年季の入った文具好きであり、文具の仕事、またそのよさを人に伝えることを天職とされています。

前回の読書習慣のお話に続き、今回は読書後にEDiTの「読書ノート」をどんな風に使われているのかを高畑さんにお伺いしました。
PHOTO:井関信雄

やっぱり紙の本が好き

自分が興味を持つ本が電子化されていない場合が多いという理由もありますが、電子ブックより紙の本の方が好きですね。というのも、ラインを引いたり、書き込みしながら読んでいるので、紙の方が使い勝手がいいんです。本を読むときの必需品は、蛍光ペン。特にステッドラーのテキストサーファーゲルが、ぬるっと線が引けて裏写りしないので気に入っています。付箋は気になったところにどんどん貼っていきます。見返しにメモを書いていることもありますね。以前は多少抵抗もありましたが、今では本をどんどん汚していっています。

2冊目に入った「読書ノート」

EDiTの読書ノートは、2015年2月から書きはじめ、3ヶ月後の5月に2冊目に入りました。他にピンとくる読書ノートがなく、たまたま手に取って買って帰ったんですが、家に置いておくにもちょうどいい大きさだし、書きこむ項目もタイトル・著者・読んだ日など、シンプルで細かすぎないところがいいですね。

本はもちろん、映画鑑賞用にも

小説やノンフィクション、実用書はもちろん、いわゆる書籍以外にもマンガとか論文などから映画鑑賞まで、まとまった作品であればわりと幅広く何にでも使っていますね。僕の場合は“感想を書く”というよりは「抜き書き集」。興味があったり、参考になるところを書き留めています。本にも線を引いていますが、そのままだと忘れてしまう。この読書ノート以前は、気になったことを書き留めるノートに、本以外のことも合わせてひとまとめに書いていました。なので、このノートを使うことで本だけを抜き出すことができるようになり、とてもよかったと思っています。

映画も小説と同様に記録している。感想なども書いているが、本編のストーリーとはあまり関係のない思いつきが多くなることも。

抜き書きするときのルール

抜き書きするときは、『三色ボールペン情報活用術(斎藤 孝・著 角川書店)』を参考に、普通は青、重要は赤、興味は緑、と色を書き分けています。……とはいえ、このノートは万年筆でも書きやすいので、万年筆やそのとき気に入っているペンなど、ルールにとらわれず書いてしまっています。また、買ったばかりのペンの試し書き用としても使っています。試し書きは、闇雲に書くより何か意味がある方が書きやすいので、この読書ノートはちょうどいいですね。

より創造的、効率的に仕事をする上で、ボールペンの使い方やメモの取り方など、これらの実践技かつ整理術が役立っている。

写真左:『三色ボールペン情報活用術』斎藤 孝 著(株式会社KADOKAWA
写真右:『知的生産の技術』梅棹 忠夫 著 / 岩波新書 (岩波書店)

「3色を使い分けながら書くことで、自分の頭の中も整理しやすくなるし、あとで読み返す際にも見やすくなる」と高畑さん。

「ボールペンや万年筆など、どんな筆記具ともだいたい相性がよく、裏に抜けにくいしっかりした紙が使われているので、そのとき使っているペンやインクの試し書きを兼ねて楽しんでいることも」というのも高畑流

「読書ノート」を続けるコツ

“本は読んでいるけど、読書ノートは続かない”という人もいると思いますが、僕の場合は、タイトルしか書いていないときや、「つまらない」の一言のときも。その逆で、書ききれないときは、数ページにわたるときもあります。またビジネス系の本だと、まとめページなどもあるので、それをコピーして貼ることもあります。人に見せるわけではないから、「その本を読んだけど、何だったっけ?」と思い出せればいいんです。

本を読み、ページを埋めていくことの達成感

僕はたくさん本を買うので、すべてを持ち続けるわけにもいかず、「ブックスキャン」というサービスを利用したり、断裁機とスキャナーを使って、本をデータ化しています。でもデータ化してしまうと、自分が線を引いたところをその中から探すのはとても面倒です。ノートに抜き書きしてあることで、すぐに要点を見返すことができますし。またデジタル化した本のインデックスとしても、ノートは役立ってくれています。それに、誰かに本の話をする必要があったときや再度読む必要が出てきたときも、ノートを元に、スキャンしたデータの重要な部分を探しだすのも簡単になります。

全部埋めなきゃ、という恐怖心があると続かないし、僕自身、子どもの頃から読書感想文は苦手でした。ピンとこない本の感想を書こうと思うとつらくなるし。本は、読後すぐに何かが分かる、というより、時が経って理解でききたり、消化する場合もあります。自分にとって“ここが大事”というところだけ書いたり、抜き書きだけしておけば、要約する必要はないので、そんなに難しくないですよ。本を読み、ノートのページが埋まっていくと、達成感もありますしね。自分にとっては、本を読むことの達成感は気持ちいいし、それを楽しんでいます。

「“抜き書き”は読み返すときの目印でもあり、自分専用の要約でもある。たまにパッと見てだいたいの内容を思い出すだけでも、読みっぱなしにするより定着するように思う」と高畑さんは、記録としてだけでなく、振り返りノートしても読書ノートを活用している。

Profile

文具王 Bunguo
高畑正幸 Takabatake Masayuki

1974年香川県丸亀市生まれ。テレビ東京の人気番組『TVチャンピオン』全国文房具通選手権に出場し、1999年、2001年、2005年に行われた文房具通選手権に3連続で優勝し「文具王」の座につく。文具メーカーにて10年間の商品企画を経て、マーケティング部に所属。2012年退社後、文具研究サイト『B-LABO(ビーラボ) 』主催をはじめ、さまざまな文具イベント、テレビ出演や雑誌・WEB執筆などで活躍中。また著書に『究極の文房具カタログ(河出書房新社)』などがある。
http://bungu-o.com