子どものための、ちょっと変わったお弁当屋さん。
躍進の背景に、農への思いと1冊のノートあり。

FCNは、元・学校栄養士の椎名伸江さんがはじめた子どものためのお弁当屋さん。塾で遅くまで勉強する小学生に「晩ごはん」を届けたり、放課後の学童施設に「おやつ」を届けたり、独自の活動を展開している。配達エリアはみるみる拡大し、まもなく拠点も増えるとか。そんな多忙を極める椎名さんが使っているのは、EDiT1日1ページ手帳とEDiTアイデア用ノート。開業までの道のりと、めくるめく毎日をマネージするための秘訣を訊いた。

PHOTO:井関信雄 TEXT:永岡綾

日本の農業のためにできること

椎名さんの決断は、いつも自分に正直だ。中学時代から青年海外協力隊に憧れを抱き、「開発途上国の農業をサポートしたい」と大学の農学部へ進んだ。そこで、授業の一環として各地の農家で住み込み体験をすることに。「大学の授業よりもむしろ畑から学ぶことのほうが多かった」というくらい、現場のおもしろさにのめり込んだ。同時に、日本の農業の厳しさも痛感するように。とある農家に「海外にでるのもいいけど、まずは日本の農業のためにできることをしたら?」といわれ、ハッとしたという。

そんな中、「出荷調整」を目の当たりにする。自然の恵みである豊作野菜も、需給のバランスがそろわなければ廃棄されてしまう。おいしく食べられるはずのレタスやキャベツが、無惨に捨てられていく……。

「これはおかしいと思いました。野菜にはそれぞれ旬があります。年中同じ野菜が店頭に並んでいるのは、とても不自然なこと。消費者がもっと旬のものを食べるようになればいいのに。そのためには『食の教育が必要だ』と考えました。そこで、農学部を辞め、短大で栄養学を学ぶことにしたのです」

「大学を辞めることに迷いはありませんでした」という椎名さん。短大卒業後は学校栄養士となり、都内の小学校に勤務した。児童約700人の給食の献立を考え、食材を仕入れ、調理する。「食育」の推進校だったこともあり、子どもたちと一緒に給食をつくったり、畑にでかけたり。食の大切さを伝えるために、さまざまな取り組みをした。

「やらなきゃ!」の思いがすべて

学校栄養士としての仕事は、目指していた「食の教育」の最先端だった。しかし、5年後、さらなる転機が訪れる。保護者向けの給食試食会でのこと。ある保護者から、「夜の給食ってないですか?」という質問が飛び出したのだ。

「放課後、遅い時間まで塾で過ごす子どもたちが増えています。両親が共働きの場合、夜のためのお弁当を用意してあげるのは難しく、子どもに500円玉を渡すだけになってしまう。子どもは、それで菓子パンなどを買って晩ごはん代わりにしているというのです。当時の私は『少しでも旬の味を』と、給食づくりをがんばっているつもりでした。それなのに、昼ごはんをケアするだけでは不十分なのだと気づきました」

調べるうち、塾大手・日能研の一部の校舎では、ファストフード店が晩ごはんを届けていることを知った。「今すぐなんとかしなくては!」といてもたってもいられず、学校栄養士を辞めた。知り合いのツテ、そのまたツテを辿り、ようやく日能研の社長にコンタクト。「子どもたちに手づくりの和食のお弁当を届けたい」と直談判し、快諾を得た。

自分で考案した献立をつくってくれる業者を探しはじめたものの、冷凍食品を使わず、無添加で、手づくりのお弁当を任せられるところは見つからなかった。やがて「自分でやるしかない」と考えるように。このとき椎名さんを支えていたのは「やらなきゃ!」という思い。学校栄養士は代わりがいる。でも、子どもたちの晩ごはんを変えられるのは自分だけかもしれない。そんな使命感に突き動かされ、事業アイデアとしての価値、ビジネスとしての採算性など、考えもしなかったという。

直談判から4ヶ月後、FCNを設立。5ヶ月後には、最初のお弁当を届けるまでに至った。それから約2年。現在は、4名のスタッフで毎日の調理と配達をこなしている。お弁当は、子どもたちに大好評。唐揚げや和風ロールキャベツといった人気のおかずのほか、石川の治部煮や京都の衣笠煮などの郷土料理、お正月のお節や初午のいなり寿司のような行事食まで。献立には、和食でなければ味わえない旬のおいしさが詰まっている。

子どもたちが残さず食べる理由は、味はもちろん、お弁当ひとつひとつに添えられた手書きの手紙にある。例えば「まもなく見頃を迎える梅の花にちなんで、鰯を梅干しと一緒に煮ました」など、季節や風土と食べもののつながりをつづっている。椎名さんは「ちゃんと伝えれば、食わず嫌いの子も興味を持って食べてくれるんです」と胸を張る。

生まれてはじめての手帳

独立してからは「常に誰かに謝っています」という椎名さん。しかし、その表情は明るい。

「学校栄養士だった頃は、いろんな意味で守られていたのだと思います。今は、何かうまくいかないことがあれば自分が矢面に立つことになります。頭を下げる場面ばかりですが、それは責任をもって仕事をするということでもあります。自分が日々成長し、少しずつうまく回るようになって、毎日ステージが違うと感じます」

そんな椎名さんの1日は、密度が濃い。午前中は学童向けのおやつの仕込み。昼過ぎに配達し、今度は塾へ届けるお弁当の仕込み。配達して戻ったら、今度は翌日のための仕込み……。その合間に、注文の管理、食材の発注などの仕事をこなす。塾の春期講習や夏期講習の時期にはお弁当の数が増え、忙しさはピークになるという。にもかかわらず、昨年までは予定管理や仕事管理のための手帳やノートを使っていなかったというから驚く。

「昔から、予定や段取りを頭の中で整理するのが得意だったんです。学校栄養士時代は仕事のリズムが安定していたので、把握しやすかったこともあります。FCNを立ち上げた直後も、手帳やノートはあまり使っていませんでした。ところが、次第に取材や講演といったお弁当づくり以外の仕事が増えてきて、今年からEDiT手帳を使いはじめました」

椎名さんが使うのは、EDiTの1日1ページタイプ。マンスリーページをメインに活用している。日付ブロックには予定を箇条書き。右上にはその月の、左のブロックにはその週の重要事項を書く。ユニークなのは、「書き込みが少ない日ほど忙しい」という点だ。

「お弁当の注文が多い日は、調理や配達以外のことをする余裕がありません。基本的にはルーティーン以外の仕事を手帳に書いているので、真っ白の日があったら、その日はやることがなかったわけでなく、お弁当の注文が多かったということなんです(笑)」

1冊のノートがキャパシティを広げる

手帳と同時に使いはじめたのが、EDiTアイデア用ノートだ。以前は、打ち合わせ時に受け取ったプリントなどにメモしていたが、今ではこの1冊にすべてをつめ込んでいる。なかでも、付箋の使い方は特徴的だ。

「まずは付箋にTO DOを書いて、インデックスのように右端に少しはみでるように貼ります。でも、仕事上のTO DOって、一連した複数の項目で成り立っていますよね。そこで、例えば雑誌取材の仕事なら『ラフ待ち/献立を考える/食材リストの提出/当日手順の確認』など、時系列にやるべきことを縦書きします。仕事が進行するにつれて付箋を折り、インデックスとして見える部分を変えていくのです。そして、その案件にまつわることはすべて同じページにメモなりスケッチなりしています」

こうすることで、ひとつの案件の全体像が1枚の付箋で俯瞰でき、かつそれに紐づく情報がノートの1ページに集約されるようになる。TO DOがすべて完了した付箋は、内側に移動する。つまり、右端に出ているインデックスの数だけ現在進行形の案件があることになり、自分がどれだけの仕事を抱えているかを目視できるようになっているのだ。

「最近は『アポイントメントなどの日時を優先すべきこと』を手帳に、『自分のペースでできること』をノートに書くようにしています。すべてを頭の中で整理していた頃は、常に複数のことを同時進行で考えていました。ところが、こうして手帳やノートに書き出しておくと、そのときやっていることに100%集中できるのだとわかりました。昨年末から拠点を増やそうと計画中なのですが、もうこれ以上は把握し切れないとパンクしそうだったところに、書くことで、仕事のキャパシティがぐっと広がりました」

FCNは、今後エリアを拡大予定だ。調理から配達までの時間をいかに短縮するかが、無添加のお弁当を提供するうえでのポイント。そのためには、小規模拠点を複数展開する必要があるのだ。

「近所の料理上手のお母さんが集まって調理して、リタイアしたおじいちゃんが配達するようなカタチにできたら。ビジネスを大きくしたいというよりも、地域が子どもたちの食を支える仕組みをつくりたいんです」と話す。椎名さんの真っすぐな生き方が、子どもたちの食体験を豊かにし、日本の農業の未来をやさしく照らしている。

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椎名伸江 Nobue Shiina
エフ・シー・エヌ株式会社

学校栄養士から、子どものための「お弁当屋さん」に。無添加・手づくりの和食のお弁当をつくり、塾などに配達している。現在は東京・中野を中心に展開中。2016年春には、自由が丘にもオープン予定。社名は、Farmer(農)、Child(子)、Nutrition(食)の頭文字。

<エフ・シー・エヌ> http://fcn-gohan.com/