デジタルのスケジュール管理機能を使い慣れてこそ気づく、
中長期的なアイデアを振り返れる手帳のよさ

ITの最新技術というと、少し前であれば「高度で、ふだんの自分の生活にはあまり関係のない技術」......というイメージがあったもの。だが2016年のニュースを少しチェックしただけでも、自動運転車両にスマホゲームで話題のVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)など、私たちの生活にもすでに「さりげなく」馴染みはじめているものが続々と現れていることがわかる。その中でもトレンドの1つとされるのが「AI(人工知能)」。そんなAIの分野で、昨年グッドデザイン賞を受賞したサービスを立ち上げた福田基輔さんに、IT関係の仕事と手帳の相性について話を伺った。

PHOTO:井関信雄 TEXT:立石郁

ITサービスでグッドデザイン賞を受賞!

福田さんの住まいは、山手線の中でも賑わう主要駅近くにありながら、少し小高い坂の途中にある閑静なヴィンテージ・マンションだ。革のどっしりとしたソファと大きなローテーブルの設えは、訪れた人と楽しい席を囲む風景が目に浮かぶ。

IT企業に勤めながら、飲食店での勤務や、毎年フジロック会場の最奥地に位置し、シャンソンやジプシーなどの演奏やパフォーマンスが行われる、フランスのキャバレーのようなライブエリア「カフェ・ド・パリ」の運営を手掛けるなど、マルチに活躍する福田さん。今年からは、世界中の部屋を貸し借りできる話題のサービスAirbnbのホストも始めるという。

興味のあるものやサービスには、積極的にトライ。仕事と平行して自らのライフワークを豊かに楽しむ福田さんは、冒頭に紹介したとおり、チャットプラットフォームで、世界で初めて(!)AIを使ったチャットボットを開発。求人サービスの公式キャラクターと「友だち」になったユーザーとチャット形式で自然に会話ができるアプリケーションで、2015年にはグッドデザイン・ベスト100を受賞した。

サービスも、飲食も、建築も等しく「ユーザーエクスペリエンス」

福田さんが手がけたチャットボットの「友だち」は今や約1700万人。そんな巨大サービスを成長させ続け、課題に取り組むのは間違いなく多忙を極めるはずだ。なぜ、求人サービスのためにチャットボットをつくったのだろうか。そして、なぜ福田さんはたくさんの仕事や役割を担い続けるのだろうか?

「まず、僕の肩書は『UXディレクター』と言います。UXとは“ユーザーエクスペリエンス”の略です。スマートフォンの利用者が増えるにつれ、ユーザーがサービスを利用する場所は家のパソコンの前から『いつでもどこでも』になってきました。

それに、求人や賃貸物件を検索するとき、どのサービスでも同じ仕事・同じ家がヒットするようになってきていますよね?  こうした内容の同質化が進んで、じゃあどうやって自分たちのサービスの価値を高めるか、というときにここ5、6年重要視されているのが『ユーザーの体験自体をデザインし、価値を高めよう』という考え方ですね。これが、UXの目的とするところです」

たとえば福田さんが手がけたチャットボットも、そのUX向上のためのプロジェクトとして進められた。使うときにユーザーが抱える不安を、公式キャラクターが「友だち」という関係性でユーザーに伴走していく。何気ない会話を楽しんでもらい、利用者が求人サービスを利用するためにポジティブな気持ちになってもらうのが目的なのだそうだ。

「『ユーザーの経験をデザインする』って、どんなことにも言えるんですよね。UXって、つまり人のことをどれだけ想像できるかということ。僕はもともと、人の暮らしや、人がどういった気持ちでその空間にいるかを考えるのが好きで学生時代は建築を学びましたが、今、飲食をやっているのも、人が『楽しい』とか『気持ちいい』『よかった』と思える場所として一番リアルに感じられるのが飲食だから。食はもちろん、空間とか音やコミュニケーション、すべてがUXなんです。」

パラレルキャリアを肯定できるようになった理由

ITに建築、フェスや酒場でのサービス……分野が違うように見える興味の範囲は『楽しいと思う体験を提供する場』という意味では同質なのだと言う福田さん。「でも実は、そういう風に自分が色々なことを手掛けるのに自信を持てるようになったのって最近なんです」とも語ってくれた。

20代の頃は、1つのことをひたすらに極める仕事をしている人に比べ「俺ってフワフワしてるな」と常に不安を抱いていたという福田さん。終身雇用が多数派ではなくなったと言われる現在、30代を迎えて考えるのは「こういうやり方も一つのスタイルなんだ」ということ。そんな彼が好きな言葉は「トライ・アンド・エラー」だという。

「結局、仕事も生き方も、正解なんてないんですよね。特に現在の仕事はいつなくなるものかわからない。日々の仕事を頑張るのはもちろんですが、同時に自分の感覚にピンとくるものにチャレンジすることによって、業界の変化にも対応できると思うし、新しい何かを発見できるのかなと思います。」複眼的な視点で長い期間取り組んできた彼だからこそ、見つけることのできた考え方かもしれない。

手帳とデジタルのスケジュール管理は役割が大きく違う

福田さんが使うEDiTの手帳は、1週間のスケジュールが見開きで確認できる「週間ノート」。

これまでは会社でのスケジュールもプライベートのスケジュールも、同僚や家族と共有・調整するためオンラインで管理していたが、手帳を使ってみてわかったのは「中長期的な視点でアイデアを振り返ることができる」という手帳にしかできないスケジュールやメモの管理の仕方だ。

「日ごとに発生する短スパンの予定で大切なのは、会う人と場所、時間などですよね。しかし、サービスを磨き上げていくような思考をするときは1日、2日で考えれば答えが見つかるものではありません。PCやスマホなどのカレンダーって詳細にものごとを書いても、思ったよりも後から見なかったりしませんか? オンラインのツールだと、ロードに時間がかかるのがストレスだったり。その点、手帳であれば、詳細に書いたことをぱっと参照できますね。」

中長期的なアイデアの成長に、手書きは威力を発揮する

福田さんのアイデア探しには、付箋タイプのメモが頻出する。スマホの画面を模したサイズの付箋に画面のモックアップ(試作)を描いてアイデアを書き込む。その付箋をページに貼り付けておくと、すぐに時系列でアイデアの振り返りができるというわけだ。

「これまでのアイデアをぱっと振り返れる付箋は便利。それにデジタルは『整える』ことにエネルギーを使いがち。ラフスケッチさえもきれいにつくろうとしてしまう。手書きはそこに気を使わなくて済むので、アイデアに集中できる。これは大きいですね。」

また、タスクを小さなTO DOにその場で小分けにするのも手書きならでは。「○○をする」とタスクの準備のために何をする必要があるか、をその下に小さくチェックボックスとともに書き込んでいく。そんな時は下半分のノート部分が活躍する。行きつ戻りつ、の作業にとても便利なのだそうだ。

デジタルの世界で活躍する福田さんだが「手帳とデジタルのスケジュール機能は性質が違うもの。共存しあって、手帳がなくなることは絶対にないんじゃないかと思っています。」と語っていた。

週間ノートの本文紹介はこちら

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福田 基輔 Motosuke Fukuda
UXディレクター

1982年生まれ。早稲田大学芸術学校 建築科卒業後、プロダクションにてUXデザイナーとして多くのサービスに関わる。転職後の現職で、対話できるチャットボットのディレクションで、2015年 グッドデザイン・ベスト100を受賞。その他、TIAAのシルバー、ADFESTのブロンズなど受賞歴がある。