フリーランスが集まるチームの強みで持続可能なものづくりを

フリーランスが集まるチームの強みで
持続可能なものづくりを

岡田 有加さん / INHEELS 代表

2012年、" エシカル × クール × セクシー" をコンセプトに「INHEELS」を立ち上げた岡田有加さん。そのモチベーションは、「デザインとビジュアル、ブランディングの力で、エシカルやフェアトレードを日本のカッコイイ人たちに届けること」。10年ほどダンスを続けていたというスラリとした体にINHEELSの服をまとい、ショートカットに赤のルージュが素敵でセクシーな岡田さんは、INHEELSの世界観を体現しているような女性。この日は、バナナから抽出した繊維でできたトップスを着ていました。環境負荷の低い素材を使い、労働者の環境に配慮したうえで、持続可能なものづくりと消費のあり方を実現するためのチャレンジを続けています。

PHOTO : 加治枝里子

私にしかできないことはなんだろう?

学生時代、バリバリのキャリアウーマンになりたかったという岡田さん。コンサルタント時代に出張先のニューヨーク、タイムズスクエアのカフェで新聞を広げながら、そんな絵に描いたような自分の様子に「 “あ、これだった”と思ってしまって。キャリアウーマンとしての姿に気がすんでしまったんです」と笑います。そして、「じゃあ、これからどうしたいんだろう。私にしかできないことってなんだろう? 」と考えました。

思いを巡らせてたどり着いたのは、大学時代から興味のあった途上国支援。「でもそれをボランティアではなく、ビジネスの側面を持ちながら社会的に意義があることとしてやりたい。コンサルタントとして学んだことも役立てる。つまりソーシャルビジネスだと思いました」

INHEELSの店内、本棚の前で手帳を広げて話す岡田有加さん

ショップ内のブックコーナーには、エシカルファッションに関する本も

日本でのエシカルファッションのイメージやスタイルはまだまだ限定されているのも事実。「 “かっこよくてセクシー”という視点、自分が着たいものをつくってビジネスにしたら、きっとおもしろくなると考えたんです」

思い立つと行動に移すまでがとても早いという岡田さん。早速エシカルファッションの先進国であるイギリスへと向かい、ファッションを学ぶ傍らフェアトレードブランドに勤務し、2年後にはINHEELSを立ち上げました。

INHEELS店内で、小物のディスプレイの調整をする岡田有加さん

スタッフみんなでつくりあげた隠れ家のような下北沢のショップ

組織でない一番のよさは
関係が密なこと

普段は下北沢のショップやオフィス、カフェなどでノマド的に仕事をしているという岡田さんの朝は、毎日7時半から2時間のカフェミーティングで始まります。「ウェブ系の仕事とのダブルワークをしている営業とミーティングしつつ、その時間にSNS の投稿やメールの返信もしています」

営業担当の布田尚大さんをはじめ、デザイナーの樋口継恵さん(タイトル写真右)、イラストレーターのルイス・メンドさん(同写真左)など、INHEELS にはフリーランスのスタッフが集まり、“ Team INHEELS ” をつくっています。周囲には自身とまったく違うタイプのスタッフを集めているという岡田さんの語る、組織ではない一番のよさ、それは「人との関係がとても密なこと」。それぞれがINHEELSのビジョンや岡田さんの求めるクリエイティビティを共有し、同じベクトルに向かっているからこそ、その関係が築けるのでしょう。

「これからは、Team INHEELS一人ひとりの役割を進化させたいと思っています。そして私の特性を生かし、やるべきことにより集中して、大事なことにフォーカスしていきたいですね」

スタンダードなカラーに、特徴あるカッティングやきれいなラインの服が並ぶINHEELSの店内

スタンダードなカラーに、特徴あるカッティングやきれいなラインの服が並ぶ

第三者になりきって、ビジネスを見つめる

「エクセルやパワーポイントを使って、ビジネスプランを考えることが大好き。もともとはファイナンス系コンサルタントをしていたので、クリエイティブな仕事をしているわりには数字が好きな方だと思います」と話す岡田さんのそれはとても大きな強み。

「コンサルをしていたときは、第三者であることに価値がありました。でも経営者となった今、機会創出よりもコストを気にしてしまう自分がいる。そんなときはコンサル時代のスーツを着て、六本木のカフェで外部のコンサルになりきって、“ ひとり会議” をしています(笑) 会社員時代は、企業の名前で信用されていた。でも今はまず、自分自身が信頼されないと。そして個人的なつながりや、“ 誰と仕事がしたいか” という感覚を大切にしています」

ネパールの工場のスタッフと話し合いをする岡田有加さん

信頼がおけるネパールの工場とは創業以来のつきあい

手帳に書くと、走りながらも大事なことを見失わずにすむ

「手で書くことは好きですね」という岡田さんにとって、「文章を書くこと」も大切な仕事のひとつ。「ブログのような長い文章を書くときだけはパソコンを使っていますが、文字だけでなく、矢印を書いたり、直感的に使えたりするので、紙に書くことが基本です」。ウェブメディアでコラム連載を持ち、ブログも書き、コレクションのコンセプトも言葉で綴ってスタッフと方向性を共有する岡田さんには、手帳に書き込むことが、そういったときのヒントにもなっているといいます。

「キーワードや短いフレーズを書き出していきながら、ひとつコンセプト文がまとまると“決まった!”という感じがして、気持ちがいいんです」

岡田有加さんのEDiT 1日1ページ手帳

① 時間軸に沿って、おおまかな予定を書き込み1 日の流れを把握。文字は黒で書くのがルール

② 打ち合わせ時に出たデザインのアイデアや発表までのスケジュールをメモして、やるべきことをイメージ

③ メモ欄には、後日振り返ることもある大切な課題やキーワード、TO DO を書き留めて

④ その日の思い出に残った周囲の言葉や様子をスケッチして、インスピレーションに

「毎日いろいろなことが同時並行していてとても忙しいので、デジタルだとスケジュールを追うだけになってしまう。でも手帳に書くと、走りながらも、予定やTO DO など大事なことを見失わずにすむ。ふとした思いつきも書けるし、1 日1 ページ手帳がちょうどいいと思っています」

インプットの1日1ページ手帳、アウトプットのアイデア用ノート

岡田さんは数冊にわたるEDiT アイデア用ノートの愛用者でもあります。「自分が何をしているのかを時間の区切りで見たり、キーワードを書き込んだり、手帳が“インプット”のツールであるのに対して、アイデア用ノートは構想やアイデアを練ったり、長めの文章を書いたりする“アウトプット”のツールですね。ビジュアルやイメージを必要とするときは、横型がいい気がしています。思考が広がっていく感じが好きです」

言葉やアイデアがぎっしりの岡田有加さんのEDiTアイデア用ノート

EDiTアイデア用ノートには、言葉やアイデアがぎっしり

“カッコイイから欲しい” と言ってもらえるだけでもいい

INHEELSが運営する勉強会「めぐるファッションラボ」には、同業者、エシカルやサステナブルに興味がある学生、または岡田さんの生き方に憧れる若い女性たちが集まっています。

「ファッションの裏側には、製造プロセスにおいて劣悪な労働条件や環境負荷など、さまざまな問題があります。人や地球を傷つけながら服をつくっているという重荷を背負わずに軽やかに生きていきたいし、そういう選択肢をほかの人にも提供したいと思っているんです。何も伝わらなくても、“ カッコイイから欲しい” と言ってもらえるだけでもいい。100 % じゃなくても、少しだけエシカルなライフスタイルをより多くの人が楽しむ状態の方が、サステナブル(持続可能)なあり方に近づくと思っています」

ドイツなど海外の展示会にも積極的に出展しているINHEELS。ネパールをはじめとした国々のパートナーに誠意と愛情を持って服づくりを続けている岡田さんのその瞳には、静かな情熱が湛えられているようでした。

オフィスのデスクで微笑む岡田有加さん
岡田 有加 (おかだ ゆか)
INHEELS代表

大手外資会計事務所系コンサルティングファーム退職後、渡英。ロンドンにてファッションを学ぶ傍ら、フェアトレードブランド勤務。2012年、エシカルブランドの「INHEELS」を立ち上げる

http://jp.inheels-ef.com