ノートは黒板と同じように書けたらいい。
話題の小学校教諭が考える、アイデア用ノートの使い方とはーー

僕らは廊下を走ってはいけないと教えます。でも、走ってしまう子はギリギリまで遊びたいけれど、授業にも遅れたくないから急ぐんです。いい子じゃないですか。僕らだって最終電車に乗るためにどれだけ渋谷駅へ走ったことか(笑)。いやもちろん危ないし、放置はできません。で、思いついたんです。廊下に高速レーンをつくればいいのに、と......。一見むちゃくちゃな発想を武器に生徒のアドレナリンをドバドバ分泌させ、そして教育のあり方に一石を投じているのが沼田さんだ。

PHOTO:井関信雄 TEXT:竹川圭

世界で一番忙しい小学生

おそらく沼田先生が受け持つクラスの子どもたちは世界で一番、忙しい毎日を送っている小学生だ。ふだんの授業に加え、常に“プロジェクト”という名の課題が40は同時進行している。参加任意のオプションだが、多い子で4つから5つ掛け持ちしているという。基本は毎週2時間ある総合学習の時間のなかで行われるが、とてもそれだけでは追いつかない。子どもたちは喜んで休み時間などを使う。

「生徒と約束したのでお教えすることはできませんが、いま、大物のコンテストを狙っています。取れるわけがないのはみんなわかっているんだけれど、ひょっとしたら、とも思っている。かくいう僕もそのひとり。賞金も桁違いなので決まったらどうしようって(笑)」

今年スタートした“プロジェクト”は民間の会社なら特別賞与や昇進のご褒美が与えられてもおかしくない、すばらしい戦果を収めてきた。さまざまなコンテストで入賞して手に入れた賞金をどう使うかを考えるのも生徒である。
「帝国ホテルでご飯を食べて、リムジンで帰ってくるってのを目論んでいます。はじめはランチの予定だったのに、ひとり、やっぱりディナーがいいといい出して予算案は紛糾しています(笑)」

金を得ることに眉をひそめる向きもあるけれど、沼田さんはそういう風には考えなかった。

「子どもだからここまで、というのはおかしいと思うんです。たとえば調べ物は図書館で、という。でも世の中はネットの時代ですよ。リテラシーをきちんと教えれば問題ない」

そもそも子どもたちも沼田さんも、賞金にはたいした価値を見出していない。大切なのは過程、なのだ。その過程にはたっぷりのエンターテインメント、そして小学生が学ぶべき事柄を周到にちりばめている。

「ただ街について調べなさいといってもテンションは上がりません。そこで僕は今日から君たちは観光大使です。好きな都道府県を選んでPRしてくださいってやった。仕上げにはおのおの発表したものを知事宛に送りました。知事直々の手紙をいただいたり、島根県のゆるキャラ、しまねっこが来てくれたりと思わぬ展開もありました」

授業のすすめ方もユニークだ。先生が説明し、キリのいいところで質問、手を挙げた生徒が答えるというのがセオリーだが、沼田さんのクラスはみなが自由に発言する。それを取りまとめるのが沼田さんの役割であり、ちまたでMC型教師といわれるゆえんだ。

「上から押さえつけるようなやり方ではちっとも楽しくない。ただし、子どもたちには経験がないから、学びへの接し方がわかりません。そこをサポートしてやるのが僕の役目なんです」

生徒を一個の人間として認める、というのは沼田さんのようなやり方をいうんだなと思う。

ポロシャツでブランディング

沼田さんも生徒に負けず劣らず、忙しい。現在は教諭のほか、学校図書生活科教科書の編集委員、全国の小学校高学年を対象とした再生エネルギーを考えるグリーンパワー教室の講師、企業向けのチームビルディングのコンサルタントなど多種多様な肩書きをもっている。先月の週末はほとんど取材など本業以外の活動でつぶれた。

「ベテランの先生は変化球で四隅を狙うわけです。僕にはそういった技術がないから、ど真ん中に直球を投げ込むだけ。空振りを取るためにはスピードが大切です。肩を鍛えてくれるのが課外活動なんです」

ど真ん中の直球と聞けば違和感があるが、社会人のひとりとして考えればどうだろう。プロジェクトを成功に導くため、スタッフにやりがいのある環境を用意する。みごと成約がなった暁には奮発して飯を奢る。みずから見聞を広めるために他業種の人間との交流を図る。あるいはブランディングといってアイコンのように着続けるラルフ・ローレンのポロシャツ、あるいは名刺の携行(教師にはふつう支給されない)…いずれもとりたてて不思議なことではない。

しかしそれにつけても次々とアイデアが出てくるのがすごいが、沼田さんはこともなげにいう。

「ずっと子どもたちと一緒にいるんですよ。ヒントは目の前にあるんです」

現場にいて、廊下同様、しっくり来なかったのがノートとか。

「黒板が横長なのに、なぜノートは縦なんだろうと思っていました。書き取りをどう展開していっていいか悩む生徒をいっぱいみてきた。そんなところで頭をつかう必要はないんです。EDiTの『アイデア用ノート』に出会ってこの仮説は確信に変わりましたね。ふだん、アイデアを練るのはもっぱら黒板です。アイデアが浮かんだらチョークでだーっと書くんですが、まさに黒板と同じようにつかえるんです。

子どもたちはみんな欲しいって。彼らはなんでも欲しいっていうんですけどね(笑)」

そう話す沼田さんのノートには、11月23日におこなわれるトークセッション「六本木アートカレッジ」の構想がぎっしり詰まっていた。拝見すると、ノート中央に“パッツン”という謎の言葉が。その全貌は当日、明らかにするそう。

沼田さんが登壇するイベント「六本木アートカレッジ クリエイティブ・シャワー2015」についてはコチラ

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沼田晶弘 Numata Akihiro
東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、生活科教科書(学校図書)著書

1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、米インディアナ州立ボールステイト大学大学院にてスポーツ経営学修了後、同大学職員などを経て2006年より現職。

http://qreators.jp/qreator/numataakihiro